一昨日、鑑定書と一緒にダイヤモンド1.05カラットの入っているプラチナのペンダントを持ち込まれ、リングに作り替えたいとのご依頼で男性がお一人で御来店いただきました。
ダイヤモンドを顕微鏡で見ましたら、クリスタル・インクルージョン(結晶内包物)がありましたので、お客様にご確認いただいてお預かりいたしました。
鑑定書を見せて頂きましたら、クラリティ(ダイヤモンドの4Cを参照)がVS1と表記してありました。でも鑑定書にはプロット画(ダイヤモンドの内包物の種類と位置をダイヤモンドの正面図と背面図に示す)がありませんでしたから、お客様は顕微鏡を覗いてはじめてお持ちのダイヤモンドのクラリティの内容を知ったのだと思います。
日本の宝石鑑定機関で発行している鑑定書は、一部の鑑定機関を除いてダイヤモンドの写真は付いていますがプロット画はありません。写真では、そのダイヤモンドの内包物の種類や位置まではわかりません。
以前ある鑑定機関の方に『なぜ、プロット画を鑑定書に書かないのですか』とお聞きしましたら『メーカー、卸商の方から鑑定書に内包物が書かれあると小売店がダイヤモンドを売り難くなるからプロット画のない鑑定書を発行して欲しいとの要望だったのです。鑑定をする時は、プロットした下書きをしますからプロット画のある鑑定書の希望があれば発行出来るのですが、そういう依頼はほとんどありませんね。』という答えが返ってきました。
私がGIA(米国宝石学会)で学んだダイヤモンドの鑑定は、プロットをしてクラリティを決めておりました。GIAやAGSL(American Gem Society Laboratories)のダイヤモンド・グレーディング・レポート(ダイヤモンド鑑定書)には、必ずプロット画があります。インタージェムでも1990年頃まで自店でプロット画のある鑑定書を発行しておりました。しかし私が40歳になった1989年頃から遠視(老眼)の兆候が出始めたので、鑑定書の発行をやめました。最初大手の鑑別機関C社にお願いしたのですが、鑑定書にGIA G.G.のダブルチェック署名と、プロット画が無いので、AGTに変えてGIA G.G.のダブルチェック署名と、プロット画のある鑑定書をお付けしております。
ダイヤモンドは、二つと同じ物がありません。鑑定書のプロット画によって顕微鏡でダイヤモンドの内包物の種類と位置を確認する事でその鑑定書との同一性がはかれます。しかしプロット画が無いということは、鑑定書とダイヤモンドが同一で無いかもしれないと、お客様に不安を抱かせてしまうのではないでしょうか。
インタージェムのポリシーは、宝石の情報開示でも述べておりますが、正しい情報をお客様にお伝えする義務と責任があると思っております。